狼上司が執着するのは
「あー!……ヒール折れちゃった」

「はあ、言わんこっちゃない」


さらに不幸なことに側溝にハマったはずみでパンプスのヒール部分が折れてしまった。最悪だ、ついてない。
そして上司の前でこんな失態を見せてしまって、酔いが覚めるほど恥ずかしい。

さすがの藤浪も呆れてため息をついている。早く立ち上がらなければ。


「そそっかしいですね、葉山さん」


すると座り込む私の両脇の下に手を入れ、引っ張り上げられて気がついたら地面に立っていた。
ころんだ子どもを立ち上がらせるみたいに軽々と。


「大丈夫ですか?」


顔を上げると、覗き込む藤浪と視線があわさった。
澄んだ瞳とかち合って思わず心臓が大きく脈を打った。

いや、だめだときめくな楓乃子、相手はあの藤浪柾だぞ。
本性は毒舌で性悪なんだ、今は酔ってかわいく見えてるだけ!
私はそう言い聞かせ、ときめきを覚えてしまった胸を必死に押さえつけた。
< 13 / 32 >

この作品をシェア

pagetop