狼上司が執着するのは
「胸が痛いんですか?打ったようには見えませんでしたけど」

「違う意味で痛いんです」

「かなり酔ってますね、胸より膝の方が痛そうなのに」


藤浪のツラの良さを甘く見ていた。
胸に手を当て呼吸を整えていると、藤浪が目線を下に向けたから釣られて自分の膝小僧を見る。

膝丈のスカートから覗く右膝に擦り傷できてそこから出血していた。
酒を飲んでるせいで足が熱いのかと思ったが、実際のところ怪我をしていたようだ。


「血が出てる!」

「出てますね、ヒールも折れて踏んだり蹴ったりじゃないですか。これじゃ歩いて帰れませんよ」


出血に大袈裟に驚く私と、いたって冷静な藤浪。
自業自得とはいえ、心配くらいしてくれたっていいじゃない。


「歩けます?」

「ええ、なんとか帰ってみせますよ」

「そうではなくて、あの植え込みの段差に座ってください」


また顔を近づけてきたからそっぽを向けて歩きだそうとした。
ところが藤浪は私の腕を掴んで引き戻すと、高さのある植え込みを指さしている。

訳が分からず立ち止まると、藤浪は私の腕を掴んだまま無言で植え込みに近づいて花壇の上に座らせた。
そして地面にカバンを置くと、ポケットティッシュを持ってきて丁寧に血を拭いている。

なにしてるんだ藤浪、なんだこのシチュエーション。
羞恥心より戸惑いから「なにしてるんですか」と声が出た。
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