狼上司が執着するのは
「膝は曲げても痛くないですか?」

「え、ああ、はい」

「では靴を脱いでください」


藤浪は次に脱いでくださいと口頭で支持しながら、私のパンプスを両足とも脱がせてそれを私の目の前に差し出した。


「はい、自分で持ってください」

「ふ、藤浪さん……何を?」


そしてしゃがんだまま私に背を向け、片膝を立てて後ろに伸ばした手のひらを空に向けた。


「家近いので、応急処置でもと思いまして」

「お持ち帰り!?」

「人聞きの悪いことを言うな」


どうやら藤浪、おんぶして自分の家に連れていくつもりらしい。
思ったことを口に出したら顔をこっちに向けて睨まれた。

不意のタメ口に心臓が跳ね上がる。怒られたのに気分が高揚してどうする。


「この体勢キツいので早く乗ってくれませんか?」

「……わ、分かりました」


大丈夫、こんな凍えるような眼差しを向けてくる課長がお持ち帰りとか考えてるわけない。
ここで断ると私が困るし、もう勢いに任せてしまおう。

私は恥を忍んで藤浪に背負ってもらうことにした。
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