狼上司が執着するのは
「家まで綺麗だなんて意外でした。仕事が完璧な人ほどプライベートは雑だって言うから、汚い部屋に期待して弱みのひとつくらい握ってやろうと思ったのに」


立派な社畜になり忘れていた異性へのときめき。
それを覚えてしまったことを悟られないよう、あえて生意気を言った。

藤浪は表情を変えるどころか眉すら動かさず、綺麗な形の眉をキープしていた。
鉄仮面かよ、私なら噛みついてるけど。


「ここ、青アザになりそうですね」

「痛っ、もっと優しくしてください!」

「酔っ払った部下を家に上げて手当てしている時点で相当優しいと思いますが?」


ところが膝を親指でぐっと押してきてあまりの痛さに声を上げた。なんだ、ちゃんと感情あるんだ。


「ごめんなさい、生意気言いました」

「おや、葉山さんが折れるなんて珍しい」

「今の発言は悪意がありました」

「素直なので情状酌量で優しくしましょう」


謝ると手を離してくれた藤浪。なんだ話せば分かる人なんだと安心していた。
しかし突然出血した部分に鋭い痛みを覚えたため上から睨みつけた。


「痛いっ!優しくってたった今言いましたよね?」

「文句ならこの消毒液に言ってください」


藤浪は手に持っていた消毒液の容器を私の膝に置き、それを含ませたコットンで傷口の周辺を拭いていく。


「変顔しないで下さい」

「誰のせいだと……」


痛みに耐えていると変顔だと言われた。
好きで歯を食いしばって変な顔してるわけじゃないって分かってるくせに。
やっぱり私、藤浪のことは嫌いだ。
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