銀杏並木の毒舌な隣人たち(祝祭の檻編)
 カラスは鉄の柵の上を「カッツン。カッツン」と音を鳴らし移動する。

 首を傾げ黒いまん丸目玉で麻美子をを見つめると、鋭い嘴からは、金銭的な苦痛を与えていた。

「そのドレス買ったんでしょ。でももう着ることはないわ」

「見えはって、最初の予算より奮発したでしょ」

「バカだな麻美子は、そんなのレンタルでよかったのに」

「変なところで自分にご褒美して、どうすんのよ」

「あちらの彼女は僕たちと同じさ。一生を誓い合ったパートナーと、空を突くような高層マンション……電信柱の特等席を手に入れた」

「二人で稼ぐサラリーは、さぞ高額よね。自由なんて安い言葉で自分を慰めていないで、あなたも早く『所有』される側になればいいの
に」

(なんなんだこのつがいは?)

 麻美子はぐうの音も出なくなると、背を向けて会場に逃げ込んでいた。

(今度の隣人はかなり強力ね)

 そこには都会の喧騒を遮断した、静謐な空間が広がっていた。

 ロビーの中央に鎮座する巨大な円柱形の水槽。 色鮮やかな金魚たちが、無機質な泡と共に、優雅に、けれど虚無的に泳いでいる。
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