悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。


 頼久は事故を徹底的に調べた。
 煽り運転を行った運転手の名は権田原(ごんだわら)郁夫(いくお)

 当時大学生だが、二浪しているため二十四歳。
 顔の鼻下にある大きなホクロ、明るい茶髪のいかにも遊んでそうな風貌の男の顔は穴が空くまで見た。

 親はそれなりの有力者だったらしくあの事故も親が圧力をかけ、強引に煽り運転の証拠を揉み消したのではないかと言われていた。

 いや、間違いなく揉み消したのだろう。


(そのせいで相田は死んだのか……っ)


 頼久は検事になる決意を固めた。
 強者が罪を逃れ、弱者が虐げられる世の中ではダメだ。
 悪は許さず、徹底的に裁く。

 そして、少しでもいいから相田への罪滅ぼしがしたかった。
 あの時話を聞いてあげられなかったせめてもの贖罪。


(……なんて自分が楽になりたいだけだな)


 *


「あ、おかえりなさーい」


 執務室に戻ると、藤川が頼久自前のコーヒーメーカーで頼久お気に入りのコーヒー豆を挽いていた。


「藤川、好きに使っていいとは言ったがその豆はブラックで飲んでこそ良さが引き立つ。ミルクも砂糖もバカみたいに入れるなと言っているだろう」
「いいじゃないっすか〜。俺ブラック飲めないもん」
「それにしても入れすぎなんだ」
「それより見てくれました?」


 頼久の小言を無視し、藤川はコーヒーに砂糖とミルクをたっぷり入れる。


「ああ、見た。内海まりえは何らかの理由で関わっている可能性が高いな」
「ですよねー」

< 102 / 157 >

この作品をシェア

pagetop