悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。


 藤川の調書によると、半年前まで内海まりえは秘書課にいた。
 しかしその後経理部に異動している。

 被害者である手嶋社長の娘婿で代表取締役役員の手嶋郁夫(いくお)との社内不倫が発覚したためである。
 愚かなことに社長室で致しているところを社長に見つかり、激怒した社長は郁夫を役員から解任し、まりえを秘書課から経理部へ異動させた。

 娘を裏切ったとして手嶋社長は二人を解雇しようとしたが、第一秘書に説得されて異動に留まったらしい。


「内海まりえの祖父は手嶋社長の支援者だったらしいです。まりえが起こした不祥事とはいえ、支援が切られることを恐れたんでしょうね」
「なるほどな」


 だから役員を解任された郁夫とは違い、秘書課から経理部異動という表向きはただの異動なのだ。


「その後秘書の席が空いた中で社長が声をかけたのが美澄要だった」
「自分のポストに収まった彼を逆恨みして罪をなすりつけたセンはなくはない、か」
「あと例の横領、恐らく犯人は内海まりえですよ」
「ああ。横領を社長に知られて殺害……あり得なくはない」


 だが頼久の中でしっくりこないところもある。
 まりえならば祖父に頼めば横領の揉み消しなど容易そうだ。

 揉み消しまではいかなくとも、支援を打ち切るように祖父に口添えするなどと脅せば社長は見逃す可能性もある。


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