悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。


「まあとりあえず美澄要の無罪を立証できそうな証拠は揃ったけど、それじゃあまだダメなんですよね」
「ああ、慎重にいかねば握り潰される可能性があるからな」
「関屋親子にか。ほーんと厄介なやつらですよ」


 藤川はフンと鼻を鳴らす。飲んでいるカフェオレは甘いだろうに表情は苦々しい。


「しかし関屋と手嶋社長の繋がりが見えてこないんですよね。やつらにとって美澄要を犯人に仕立て上げるメリットが何なのか」
「内海まりえ、いや祖父の内海元大臣と関屋の関係は?」
「それも調べてるけど今のところは出てこないっすね」
「では、手嶋郁夫は?」
「えっ手嶋郁夫?」


 藤川は目を丸くして頼久を見返す。


「ああ、手嶋郁夫は婿養子だったのだろう? そっちの繋がりはないのか?」
「ええーーっと……」


 藤川は一旦コーヒーカップを置き、PCのキーボードを叩く。


「手嶋郁夫の旧姓は権田原(ごんだわら)。こいつの実家もなかなか裕福ですね」
「待て、権田原だと?」
「あ、はい。権田原郁夫です」
「なんだと!」


 頼久は血相を変えて藤川のPCを覗き込んだ。
 画面には手嶋郁夫のプロフィールと写真が映し出されている。

 郁夫の顔写真を拡大して凝視した。
 黒髪をツーブロックにしており、一見するとスポーツマンを思わせる。

 特徴的だった鼻下の大きなホクロはなく、恐らく整形手術で除去したのだろう。
 見た目はかなり変わっているが、細く憎たらしい目はそのままだ。脳裏に焼き付けるまで見たので間違いない。

 権田原郁夫、相田の事故を起こした張本人である。


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