悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。


「メッセージ見ました。流石は松丸さんですね」
《おう、これで美澄要は完璧にシロだ》


 元々手嶋社長殺害事件の捜査は松丸たち所轄が担当していた。
 松丸は当初から要の犯行に疑問を持ち、再捜査すべきだと上に進言していたがいつの間にか担当を外されて警視庁捜査一課に捜査権が移っていたという。

 それを聞いて密かに再捜査を依頼したところ、松丸はすぐに動いてくれた。
 松丸は熱心に聞き込みをして回り、ついに一人の社員から犯行時刻に要が秘書室にいたという証言を手に入れたのである。


《今年入社したばかりの新入社員で人の顔を覚えられてないから自信がなかったらしい。それで言い出せなかったけど、俺が毎日聞き込みしてんの見て話しかけてくれたんだ》
「勇気ある若者に感謝ですね」
《全くだ。改めて美澄の写真を見せたらそうだ、と答えてくれたよ》
「ありがとうございます。美澄要のアリバイは成立です」


 これでようやく一つ安心できる。
 だが本当の戦いはこれからだ。


《それと捜査権が一課に移った件、それとなく探ってみたら関屋検事正の指示だそうだ》
「! それは本当ですか」
《ああ。あのタヌキ親父、なんか企んでるぞ》
「こちらでも調べてみます。それから松丸さん、手嶋郁夫を調べていただけますか?」
《フッ、流石永瀬検事。俺もそいつが怪しいと睨んでいたところだ》


 電話越しでもニヤリと笑う無精髭を生やした顔が思い浮かぶようだった。


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