悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。
つかさは涙をすべて拭い取り、ハンカチをギュッと握り締める。
「確かに真犯人が捕まらないと終わらないよね」
「ああ、この事件には大きな権力による陰謀のようなものを感じる。迂闊に動くとせっかく手に入れた無実の証拠も潰されるかもしれん。だから悪いが、まだ何も話さないでくれ」
「わかった」
つかさは力強く頷く。
「頼くんのこと信じてる」
「ああ、絶対に逃しはしない」
権田原郁夫、どんな男なのだろうと相田の初七日が終わった後に郁夫の大学まで赴いたことがある。
相田が死んだなんて知りもしないのか、仲間たちとつるんで楽しそうに笑っていた。
事故を起こしたなど気にも留めていない様子で、今すぐその胸倉を掴んで殴り飛ばしてやりたいと思った。
相田は生きることに絶望してこの世を去ったのに、この男は自分の罪と向き合いもせずに悠々と遊んでいる。
こんなにも激しく憤りを感じたことはなかった。
(だが今度こそ逃さない。必ず有罪にしてみせる)
食事を終え、つかさが手作りの梨タルトを切り分けてくれた。
「それにしても何故急に作ろうと思ったんだ?」
「それは……頼くんが元気になってくれるかなって」
「僕が?」
「ハルくんに聞いたの。今日お友達の命日なんだよね」
頼久は思わず目を見開く。
「ごめん、勝手に聞くのはずるいかなって思ったけど最近元気なかったから気になって。それでハルくんに聞いてみたら、相田さんの話を聞いたの」
「そうか……」