悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。


 その夜、頼久が帰宅してからずっとタイミングを伺っていた。
 だけどなんとなくタイミングを掴めず、気づいたら風呂から出て後は寝るだけという状況になってしまう。

 覚悟を決めて聞こうと思っていたのに、いざとなると弱気になる自分が情けない。
 もう一度深呼吸してリビングに行くと、「つかさ」と手招きされた。

 きょとんとしながら近づくと、頼久は手にドライヤーを持っている。


「髪乾かすからここに座ってくれないか?」


 そう言って指差したのは、頼久の膝だった。


「えっ!?」
「ほら」


 グイッと腕を掴まれたかと思うと、そのまま頼久の股の間に座らされる。
 何が起きたのかわからず固まるつかさの髪に触り、ドライヤーで乾かしていく。


「急にどうしたの……?」
「僕がしたいからしている」
「そ、そう……」


 口ではそれしか言わなかったものの、内心では「したいからするって何!?」と大パニックだった。
 座らされている場所と近さにも髪に触れられていることにも、すべてに緊張して心臓の音がうるさい。

 頼むからドライヤーの音でかき消して欲しいと祈った。


「つかさ」
「な、何?」


 頼久は一度ドライヤーを止める。


「実はつかさに渡したいものがあって」
「渡したいもの?」


 すると頼久は後ろからラッピングされた細長い袋を差し出す。
 なんだろうと思いながら開けてみると、中身は香水だった。


「えっ、香水?」


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