悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。
すると関屋は待ってましたとばかりにニンマリと笑う。
「動機ならあります。被告人は会社の金を横領していたのです」
「なっ、そんなの知らないっ!」
要が叫ぶが、「静粛に」と裁判長からいなされてしまった。
関屋は続ける。
「テシマホールディングスでは数ヶ月前から若干の数字が合わないということが、経理部の間で問題になっていました。わずか数千円の誤差ではある……が、塵も積もれば山となります」
関屋は芝居がかった、もったいぶったような口調だった。
「被告人は経費を少しずつ誤魔化し、着服していた。たとえ手土産のまんじゅう一つ分だとしても、横領は横領です」
「違う! 俺はそんなことしていないっ」
「証拠はあります」
関屋が提示したものは、要が経費を横領していたという証拠だった。
「きっと社長にバレ、問い詰められたことで犯行に及んだのでしょう」
後から岸本に聞いた話によると、そんな事実は寝耳に水だったそうだ。
後の捜査で判明したことだと関屋は説明していたが、つかさは疑った。
これは偽の証拠なのではないか、と。
要に罪を着せるため、でっちあげた証拠なのではないか?
「この悪徳検事!」
裁判後、出て行く関屋に対してつかさは怒鳴った。
「無実の人に罪を着せて、何が法よ! こんなことが許されると思ってるの!?」
関屋はチラリとつかさを一瞥しただけで、その場を去って行った。