悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。
心臓が壊れそうなくらいドキドキしているのに、昼間過ぎったことが脳裏をちらつく。
「……ずっとって、いつから?」
「ずっとはずっとだ」
「はぐらかさないで」
つかさは思わず頼久の腕から逃れ、振り向いてじっとレンズ越しの黒い瞳を見つめる。
「頼くんって昔は恋人いたよね」
「……え?」
頼久は驚いて瞬きする。
「頼くんが大学生の時、内海まりえさんって人と……」
「はあ!?」
頼久のだいぶ大きめの声に今度はつかさが驚く番だった。
「内海まりえ? なんでそうなる?」
「だって、その人本人が言ってたから」
「最悪だな……」
頼久は深い溜息を吐いてから、つかさに向き直る。
「内海まりえとは何もない。祖父同士が知り合いで家族ぐるみの付き合いはあったが、それだけだ。ただそいつには言い寄られていて、勝手に付き合っていると風潮されたことはある」
「えっ! そうだったの?」
「本人にははっきりと断ったし、好きな人がいることも伝えた」
「……あ、だから私に言ってきたのかな」
「何を言われたんだ?」
「私の恋人だから近づくな、みたいな」
「最悪だ」
頼久は吐き捨てるように言った。
「誓って言うが、内海とは何もない。僕が好きなのは今も昔もつかさだけだ」
「わ、わかった……!」
そんなにはっきり言われるとまた顔が熱くなる。
「本当に信じてくれるか?」