悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。
翌日夜八時、バー・TRUMPを訪れる。
スマホを確認してから店に入った。
カランというベルとともに扉を開けると、既に客が数人いた。
スーツ姿の若い男性がカウンター席に、奥のテーブル席にもう一人スーツの男性が座っている。
カウンター席には男女のペアもいて、二人で話をしていた。
(この中の誰が私を呼び出したの……?)
この中の一人か二人か、あるいは全員がグルかもしれない。
恐る恐る店内を見回していると、スッと奥に座っていたスーツの男性が立ち上がりこちらにやって来た。
「こんばんは。美澄……いや、永瀬つかささんだね?」
「っ、はい……」
「よくぞ来てくれた。さあ、こちらへ」
案内されたのは地下だった。どうやらこのバーは地下があるらしく、階段を降りていくと似たようなバーカウンターがあった。
だが客は一人もいない。
「この店は私の知り合いが経営しているバーでね。大事な話の時はこの地下バーを貸してくれるんだ」
「そう、なのですか……」
「生憎電波が通じにくいんだが、秘密の話をするには持ってこいだろう?」
そう言われてスマホを確認してみると、圏外になっていた。
やられた、とつかさは思った。
店に入る前に頼久に電話をかけたのだ。
繋がったのを確認したが、何も言わずバッグにしまった。
頼久が異変に気づいて聞いてくれるのではないかと思ったが、先手を打たれてしまった。
「改めて自己紹介しよう。私の名は関屋剛造。東京地検で検事をしている」
「……存じ上げております」