悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。


 つかさは呆然とした。悔しいけれど知らなかった。
 つまり頼久がどんなに完璧な証拠を揃えても、関屋剛造がいる限りすべては闇に葬り去られるということなのか。


「故に私に逆らう者はいないが、あの男は違う。言うことを聞かずに好き勝手されて困り果てていたんだよ。地方の検察庁に飛ばしたいところだが、孫思いの六条グループ会長が黙っていないだろう」


 流石の関屋も旧財閥家系で多大な影響力を持つ六条グループを敵に回したくないようだ。


「だから私の姪と結婚させて派閥に引き込みたかったが、それも拒否したわけだ。そうなれば、彼の妻であるあなたに頼むしかない」
「何を……」
「永瀬検事に伝えてくれないか。手嶋社長を殺害したのは、やはり美澄要だったと」
「冗談じゃないっ!」


 バン! とカウンターを叩き、思わず声を張り上げていた。


「弟は絶対に無実です! 姉の私が一番よくわかっています!」
「そのプライドをほんの少しねじ曲げるだけでいいんだ」
「プライド? 事実をねじ曲げるのではなく?」
「何、無期懲役が嫌なら控訴すればいい。少しくらい減刑は認められるかもしれないな」
「ふざけないで!」
「従わなければ階段から突き落とすのではなく、次は道路に向かって突き飛ばしてしまうかもしれない」


 こんなにもはらわたが煮えくり返ったことは初めてだった。
 悔しくて悔しくて涙が溢れる。

 やはり祖父を突き落としたのもこの男だったのだ。
 こんな悪党の言いなりになるなんて絶対に嫌だ。だが、従わなければ芯が狙われる――。


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