悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。


 ほんのわずかな結婚生活だったが、とても楽しかった。
 取引から始まったが、徐々に彼との距離は縮まり再び彼に恋をした。

 ずっと大好きだった人と想いが通じ合い、初めて一夜を共にしたことは一生忘れない。
 きっとこの先も頼久以上に愛する人はいないのだろう。

 本当は離れたくない。だけど愛する人が傷つくのはもっと耐えられない。

 震える字でようやく書き終えた離婚届は、涙で濡れてしまっていた。
 直接お別れを言うのは無理だ、この離婚届を置いて出て行こうと決めた。

 実家にも頼れないからこの先一人で生きていくしかない。
 でも自分がいては家族に危害が及ぶかもしれないし、要を見捨てたのだから合わせる顔などない。

 この離婚届は愛する家族との永遠の別れを意味しているのだと思うと、尚更涙が止まらなかった。


「約束は守ります。だからあなたも約束を守ってください。要の保釈を支援し、家族には決して危害を加えないと約束してください」


 せめてもの抵抗に、つかさはキッと関屋を睨み付けた。
 関屋は満足そうに微笑む。


「無論だ」


 ニタニタとした顔が憎らしくてたまらない。つかさはぎゅっと拳を握り締める。
 関屋は残りのウイスキーを一気飲みしてグラスを空にした。


「景気が良いのでもう一杯いただこうか。おーい、マスター」


 関屋がグラスを傾けて氷をカチャカチャと鳴らし、裏にいるマスターを呼んだ。
 しかし現れたのはマスターではなかった。


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