悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。
「ほっほっほっ、やるじゃないか頼久」
楽しそうな六条会長の声が聞こえてハッとした。
つかさは慌てて涙を拭うと、会長に向かって深々とお辞儀をする。
「このたびはご挨拶が遅れて申し訳ございません。頼久さんと結婚させていただきました、美澄つかさと申します」
「つかささん、こちらこそ紹介が遅れてすまないね。頼久の祖父の六条國光です」
國光は穏やかに微笑む。
「怖い思いをしたが、もう大丈夫じゃよ。あとは頼久に任せておけばいい」
「はい……っ。ありがとうございます」
「娘から梨をお裾分けしてもらったんだがね、とても美味しかった。あんなに美味しい梨は初めて食べたよ」
「ほ、本当ですか」
「また食べさせてくれるかな」
「はい、もちろんです!」
國光は満足げに微笑んだ後、頼久のことをジロリと睨む。
「頼久、わしはまだ許しておらんからな。こんなにいい人と結婚していながら、わしに何の報告もしなかったこと」
「彼女は今大変な時期でしたので盛大にお祝いというわけにもいかず。事件が落ち着いてからおじいさまにはご報告するつもりでした」
頼久は悪びれた様子もなくしれっと答える。
「何じゃと! わしを除け者にしよって!」
「おじいさま、この後は事情聴取になりますので行きましょう」
國光は尚もプリプリ怒っていたが、頼久は適当に流していた。祖父の扱いには慣れているらしい。
つかさは申し訳なく思いつつ、クスリと笑ってしまった。