悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。


 その日は遅いのでつかさは翌日警察の事情聴取を受けることになった。
 関屋から受け取った脅迫メールなども見せ、事細かにすべてを話した。

 当事者であるつかさの事情聴取は長かったが、警察署の前で頼久が待ってくれていた。


「頼くん!」
「大丈夫だったか?」
「うん、大丈夫」
「そうか。よく頑張ったな」


 頼久は微笑み、つかさの頭を撫でる。


「驚いた。鉄仮面のより坊が嫁さんの前ではそんな顔するんだなぁ」


 そう言ったのは昨日関屋に手錠をかけた松丸だ。
 松丸がつかさの事情聴取を行い、出口まで送ってくれたのだ。
 その際に彼自身のことも聞いていた。


「松丸さん、妻がお世話になりました」


 すぐに表情筋を元に戻し、頼久は松丸に頭を下げる。


「おう。お前もお疲れさん」
「いえ、本当の戦いはこれからですよ」
「それもそうだな。定年前最後の事件はなかなか大仕事になりそうだ」


 松丸は今年で定年退職を迎えるらしい。


「最後の最後まで厄介な事件ですね」
「だがやり甲斐もあるってもんよ。定年まで足使って捜査するって決めたのは俺だしな」
「流石ですね」
「じゃあな、より坊。つかささんもお気をつけて。落ち着いたら結婚祝いに一杯やろう」
「ええ、その際は松丸さんの定年祝いも一緒に」


 つかさも深々とお辞儀をしてから、頼久の運転する車に乗り込んだ。


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