悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。
広い式場も魅力的だが、その分ゲストとの距離は遠くなる。
それよりかは皆の顔がよく見える距離で家族に見守られながら挙式をしたいと思った。
そこで選んだのがセントーサ島にある小さなチャペルでのリゾート婚だ。
紺碧の海を背景に、穏やかな雰囲気の中で行えるのが魅力的だと思った。
ちなみにシンガポールにしたのは季節的に過ごしやすい気候であること、時差が一時間しかないので高齢の祖父母にも負担が少ないと思ったためだ。
何よりずっと行ってみたい国でもあった。
「雨が心配だったけど、何とか晴れて良かったね」
シンガポールは二月頃までは雨季なのだが、幸運にも晴天だった。
おかげでマーライオンと一緒に青空の下で綺麗な写真が撮れている。
「最初はちょっと照れ臭かったけどだんだん楽しくなってきた」
「よかったな」
「頼くんは? 楽しめてる?」
基本的に頼久は表情もテンションも変わらないため、どう思っているのか今ひとつわからない。
「ああ、楽しんでいる。何故なら」
そう言ってふわりとつかさの体を持ち上げた。
「つかさが楽しそうだからな」
「なっ、なんで今抱っこしたの?」
「こういうポーズもありかと思って」
「いいですね! 素敵です!」
カメラマンはシャッターチャンスを逃さないとばかりに連写していた。
自分からこんなポーズをするとは思っていなかったので、ああ見えて頼久は浮かれているのかもしれないと思った。
(相変わらずわかりにくいんだから)
だがそんな彼が愛おしくてたまらない。