悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。
マーライオンパーク、マリーナベイサイドでの撮影は終了となり、その日の深夜の便で家族が入国することになっている。
全員揃ってから翌日はいよいよ結婚式だ。
【これから飛び立ちます】という母からのメッセージでは、広々としたビジネスクラスではしゃいでいる弟たちの写真付きだった。
「おじいさまに改めて感謝しなきゃ。家族全員分のビジネスクラスの航空券とホテルまで手配してくださったんだもの」
「まあ、それくらいは当然だろう。おじいさんの足は大丈夫か?」
「杖が必要だけど何とか歩けているみたい。シンガポールに行くの楽しみにしてたよ」
「そうか、それならよかった」
「そういえば、嘉那ちゃんはうちの家族と一緒なんだね」
母が送ってくれた写真には弟たちだけでなく、頼久の妹・嘉那も写っている。
それを見た頼久は顔をしかめた。
「なんで嘉那がいるんだ? 六条のプライベートジェットで行くんじゃなかったのか」
「あれ、聞いてない? 嘉那ちゃん、最近うちの農園によく来てるらしいよ」
「なんだと」
嘉那は現在大学四年生。改めて両家で食事会をした時にようやく顔を合わせたが、二人の兄とはあまり似ておらず天真爛漫で子うさぎのような子だった。
「おねえさんと呼んでもいいですか?」と上目遣いで聞かれた時は、あまりのかわいさに悶絶した。