悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。
第二章 初恋の人は悪辣検事
この日、つかさは弁護士事務所で要の担当弁護士・岸本を訪ねていた。
農園のことは祖父母や両親に任せ、つかさは家族の代表として密にやり取りをしている。
今回は控訴の準備を進めるために訪ねたが、依然として要が不利なことに変わりはないそうだ。
「今何とか調査を進めていますが、こちらに何か手がないと一審を覆すのは難しい状況です」
「そうですか……」
あの監視カメラ映像がフェイクだと証明できなければ、要は生涯を刑務所で終える可能性が高い。
そんなのダメだ、絶対に何とかしなければ。
だけど現状何の手がかりも見つかっていなかった。
岸本は目を泳がせながら、気まずそうに口をモゴモゴさせる。
「お姉さん、やはり減刑を求めるというのは……」
「弟はやってないんですよ!」
思わず大声が出てしまった。
「岸本さん、本当は弟が殺したのだと思っているんじゃありませんか?」
「そんな、滅相もございません」
岸本は冷や汗をかき、慌てていた。
「私は美澄さんの弁護士として力になりたいだけです。ただ、今の状況で控訴しても有罪が覆ることはほぼありません。それなら、まずは……」
「無罪判決以外は有り得ません」
つかさはキッパリと言い切った。
「私が望むのは、無罪ただ一つです」
「わ、わかりました……」
岸本はつかさの勢いに押され、ハンカチを額に当てていた。
真面目な人柄だが、彼はどうにも気の弱いところがある。
何が何でも無罪を勝ち取ってもらわなければ困るのに、とつかさは歯痒さを募らせる。