悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。


 岸本はそう言って肩を竦めた。


「正直担当検事が関屋検事だったのはまだマシです。永瀬検事であれば、もっと厳しい判決になっていたかもしれません」
「そんなに、ですか」
「関屋検事は親の脛をかじるドラ息子ですが、永瀬検事は正真正銘の天才ですからね」


 やはりどうしても信じられなかった。
 つかさの知る頼久とはあまりにもかけ離れている。

 あの日再会した時、結局頼久は一度も笑わず仏頂面を貫いていた。
 助けてくれたお礼を言わなければいけなかったのに、変わり果てた彼に驚いていたらいつの間にか立ち去っていた。


(せめてきちんとお礼がしたい)


 もしかしたら頼久は、つかさに会いたくないと思っているかもしれない。

 だけど、できればあの時のことを謝罪したいと思っている。
 頼久にあんな顔をさせてしまってから十二年、ある意味でつかさの時は止まったままだ。


 * * *


 つかさがまだ東京に住んでいた頃、家を買って引っ越した先の真向かいに住んでいたのが永瀬家だった。
 母親同士が意気投合し、互いの家に行き来するようになる。

 休日は永瀬家の広い庭で一緒にバーベキューしたりと交流を深めていた。

 永瀬家は兄二人、妹一人の三兄妹、美澄家は姉一人、弟二人の三姉弟と真逆である。
 年齢もバラバラだったが、子どもの頃は一緒になってよく遊んだ。

 つかさが一番仲が良かったのが、次男の頼久だった。
 つかさの二つ上だったが、お兄さんというよりほぼ同い年のような感覚だった。

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