悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。
頼久の父は大手弁護士事務所の代表を務め、頼久も一つ上の兄・惺久も弁護士を目指していた。
『そういえば久々にハルくんに会ったよ。相変わらずカッコよかった』
惺久と頼久は顔立ちはよく似ているが、惺久の方が表情豊かで柔和な印象を与える。
その端整な美貌は王子様そのものだ。
顔を合わせるとにこやかに挨拶してくれるが、実のところ惺久と相対するのは緊張してしまう。
(だってハルくん、王子様すぎるんだもの。別世界の人って感じで、緊張しちゃう)
だけど何故か頼久には緊張しない。
惺久と顔立ちは似ているのだから彼もとびきりの美形に違いないのだが、昔から頼久には緊張しなかった。
(まあ頼くんは王子様って感じではないもんね――なんて言ったら失礼かな?)
惺久は何をしても完璧だが、頼久は案外不器用な一面もある。
そんなところが親しみやすいのかもしれない。
『……つかさは、兄貴がカッコいいと思うのか』
『当たり前じゃない』
『……僕は?』
『え?』
『いや、なんでもない』
なんだか頼久らしくない言葉が聞こえた気がしたが、よく聞き取れなかった。
『つかさ、僕は困っている人を助けられる弁護士になる。兄貴よりも立派な弁護士になってみせる』
そう言った頼久のメガネの奥の瞳には、確かな情熱が燃え盛っていた。
『うん、頼くんならなれるよ』