悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。
お世辞などではなく、心の底からそう思った。
真っ直ぐな夢を抱き、努力を惜しまない頼久を尊敬していて時折眩しく感じる。
そんな想いが恋だと気づいたのは、高校生になった時だった。
頼久に勉強を教えてもらい、頼久と同じ都立の進学校に合格したつかさはある時、偶然頼久が別の女子に告白されているところを見てしまったのだ。
『永瀬くんのことが好きなの』
『すまないが、他に好きな人がいる』
その言葉を聞いて、自分が思っていた以上にショックを受けた。
(頼くん、好きな人いたんだ……)
恋愛の話なんてしたことがなかったから、全く知らなかった。
気楽に遊びに行けばやれやれと言いながら必ず付き合ってくれるし、勝手に恋人はいないと思っていた。
だが、好きな人がいたのは盲点だ。
(もし頼くんに彼女ができたら、今みたいに一緒にはいられないんだ)
そのことを知ってから何となく気まずくなり、つかさは頼久を避けるようになった。
『つかさ、最近僕を避けているだろう』
学校から帰宅すると、家の前で頼久が待ち構えていた。
『避けてなんかないよ……』
『嘘つけ。全く寄り付かなくなったじゃないか』
『それは、もう高校生なんだし、いつまでも頼くんに頼ってばかりも良くないかなって……』
気まずくなりながらモゴモゴと言葉を濁すと、頼久は『そんなことか』と息を吐く。