悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。
『変な気を遣うな。つかさらしくもない』
『そりゃ気を遣うよ!』
『いらん、いつも通りでいい。変に気を遣われる方が居心地が悪い』
『私、これからも頼くんの傍にいてもいいの?』
『当たり前だろう』
心の中がじんわりと温かくなるのと同時に、きゅっと胸が苦しくなる。
(私が傍にいてもいいのは、幼なじみだから……?)
きっとこの意味は恋じゃない。
そう思うと苦しくて切なくて、つかさは頼久のことが好きなのだと気づかされた。
本当はずっと恋していたのに、気づけずにいた。
気づいた時には、失恋が確定していた。
(どうして私じゃないんだろう)
頼久の好きな人が自分じゃないことなどわかっている。
最初から失恋が確定している恋なんてつらいだけだ。
こんなにつらい思いをするなら、気づきたくなんてなかった。
それでも頼久への想いを断ち切るなんてできない。
頼久以上に好きになれる人なんていない。
顔も名前もわからない頼久の好きな人のことを考え、勝手に嫉妬してしまう。
そもそも頼久はかなりモテる。
昔は無愛想で怖いなどと言われていたが、成長するにつれて大人っぽい色気を纏うようになっていた。
(それなのにずっと恋人をつくらなかったのは、好きな人がいたからだったんだ……)
その夜、つかさは枕を濡らしながら寝落ちていた。