悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。
結婚の二文字にもっと強く頭を殴られた感覚に陥る。
(もうそんなところまで話が進んでいたなんて……)
『子どもみたいな幼なじみごっこはやめて、現実を見たら?』
『っ、私は……』
『いいわね? 彼に二度と近づかないで』
そう言うとまりえは踵を返し、ピンヒールの音を立てながら去っていった。
つかさは何も言い返せず、ただ彼女の後ろ姿を見送るしかなかった。
まりえはつかさの気持ちを見抜いているからこそ牽制してきたのだろう。
何も言い返せなかったのは、今まで目を逸らしてきた現実を突きつけられたからだ。
(わかってる……私と頼くんは、住む世界が違うこと)
わかっていながら、それでも傍にいたくて見て見ぬフリをしていた。
幼なじみという関係性に縋りたかったのも、そうでもしないと頼久の隣にはいられないからだ。
でも、もう潮時なのかもしれないと思った。
『――つかさ?』
『……っ、頼くん……』
俯きながら帰宅すると、頼久がいた。
どうやら彼もちょうど今帰宅したばかりのようだ。
『どうした? 泣いているのか?』
『違うよっ、なんでもない』
つかさは慌てて顔を逸らす。
だが頼久はつかさの腕を掴んだ。
『なんでもないわけないだろう。何があった?』
『なんでもない! 頼くんには関係ないよ!』