悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。
それからしばらくして、父から会社が倒産になると聞かされた。
千葉に引っ越し、祖父の梨農園を手伝いたいと思っているということも。
まだ高校生のつかさにはわかった、と頷くしかなく一家で千葉に引っ越した。
祖父母は温かく迎え入れてくれ、一緒に暮らせることを喜んでくれた。
あれから頼久には会っておらず、連絡も取っていない。
引っ越してから永瀬家との関係は完全に途絶えてしまった。
だが、つかさの脳裏にはあの時の頼久の寂しそうな表情がこびりついて離れない。
何年経っても忘れられない。
頼久にあんな表情をさせてしまった、好きな人を傷つけたという後悔がずっとつかさの胸中を渦巻いている。
初恋がこのような形で終わってしまい、新しい恋に乗り出す気にはなれなかった。
新しい出会いがないわけではなかったが、どうしても頼久の顔が思い浮かぶ。
そのまま誰とも恋愛できないまま、十二年の月日が流れていた。
まさかあのような形で頼久と再会することになるとは、夢にも思わなかった。
* * *
「頼くん、どうして弁護士にならなかったんだろう……」
つかさは自室のベッドの上で寝転がりながら、ずっと同じ疑問を繰り返していた。
あんなに弁護士を目指して勉強していたのに、検事になっているとは思わなかった。
それも証拠品をねつ造してまで有罪判決をもぎ取るだなんて、とても信じられない。
つかさの知る頼久は、誰よりも真面目で正義感のある人物だったはずなのだ。