悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。
つかさはスマホの連絡先を開き、【永瀬頼久】という名前を選択する。
今も変わっていなければ、頼久の連絡先はわかっている。
この電話番号にかければ、彼に繋がるかもしれない。
そう思って何度も電話をかけようとしたが、指が動かなかった。
あの日から何度も彼に謝りたいと思った。
嫉妬心から冷たい言葉を浴びせ、頼久を傷つけたことを謝罪したい。
だけどできなかった。
頼久に嫌われてしまったかもしれないし、既に結婚しているかもしれない。
そう思うと苦しくて、自分が悪いのに臆病になってしまう。
「でも、指輪してなかったな……」
彼の薬指に指輪はなかった。
単にしていないだけかもしれないが、ちょっとだけ嬉しいと思った自分は嫌な女だと思った。
「――いや、頼くんのこと考えるのはやめよう」
どうせ考えたってわかるわけがない。
それよりも今は、要の事件に集中しなければならない。
何としてでも無罪判決を勝ち取らなければならないのだから。
つかさは頭から毛布を被り、頼久のことは無理矢理頭の中から追い出して眠りについた。