悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。
「みんな揃ったね。今日も一日お疲れ様」
食卓はみんなで囲む。それが美澄家のルールである。
「いただきます」
両手を合わせ、食事をいただこうとした時、廊下からバタバタという足音が聞こえた。
「ただいま!」
「なっ……要!?」
突然帰ってきたのは美澄家の長男で二歳下の弟・要だった。
要は東京で就職し、普段は一人暮らしをしているが久々に実家に帰ってきた。
「おっ、ばあちゃんの料理だ! うまそう!」
「ちょっと要! 帰って来るならちゃんと言ってよ」
「いいじゃん。肉もらいっ」
「それ私の!」
要が帰ってきたことで美澄家は全員揃い、尚且つ騒がしくなった。
「要、仕事はどうなの?」
母のつぐみが訊ねる。
要は大手不動産会社に勤め、投資コンサルティングをやっている。
「よくぞ聞いてくれました! 実は俺、社長秘書に抜擢されたんだ」
得意げな要につかさは目を丸くする。
「社長秘書!? すごいじゃない」
「去年社長の前でプレゼンする機会があったんだけど、その時俺の企画を気に入ってくれてさ。秘書として来てくれないかって言われたんだ」
「すごい! お祝いしなきゃだな」
要の出世に家族は皆大喜びだった。
自分はいつか成功してたくさん大金持ちになってやるんだ。
要は子どもの頃からそう豪語していた。
子どもらしい夢ではあるが、その背景には父・立樹の会社が倒産したことがある。