悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。
すると頼久は、氷点下の視線で一瞥した。
「それを話す必要があるか?」
「だって、気になって……」
「君には関係のないことだ」
明確に線を引かれたのがわかり、つかさはグッと唇を結ぶ。
「そんなことより、出かけるぞ」
「出かけるって、どこに?」
「取り急ぎ指輪が必要だろう。取り寄せになるかもしれないし、とっとと行くぞ」
つかさは言われるがまま頼久の後について行き、頼久の愛車と思われる白い車の助手席に座った。
「一応聞くが、好きなブランドはあるか?」
「いや、特に……」
農業をしているつかさは、普段からアクセサリーを身に付けない。
特に指輪など一度もしたことがなかった。
「わかった。とりあえず銀座に向かう」
そう言って車を走らせた。
運転している頼久をチラリと見ながら、つかさは遠慮がちに言った。
「あの、指輪なんて何でもいいよ。私はあんまり付けないと思うし」
「そういうわけにはいかない。結婚したとこれ見よがしに見せたいからな」
「そう」
「いくつかルールを決めよう。指輪はしたくなければしなくていいが、地検に来る時は必ずしてくれ」
「……わかった」
これから結婚指輪を買いに行く会話とは思えないな、と内心で溜息をついた。
あまりにも業務的すぎる。契約結婚だから当然かもしれないが、ここまで色気がないのかと呆れてしまった。