悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。
着いた場所は銀座の高級ジュエリーショップだった。
ブランドに疎いつかさでも知っているハイブランドのジュエリーショップで、店名を見ただけで慄く。
そんなつかさに構うことなく、頼久は中へ入った。
「いらっしゃいませ。おやおや、これは――頼久坊っちゃんではございませんか」
グレーヘアの老紳士が恭しくお辞儀し、目を細める。
「お久しぶりです、オーナー」
「まさか頼久坊っちゃんがいらっしゃるとは。つい先日、お母様にネックレスをお買い上げいただいたばかりだったのですよ」
「母はここのジュエリーの大ファンですからね」
つかさは二人の会話をポカンとしながら聞いていた。
聞いたこともないセレブの会話に呆気に取られる。
「こちらの美しい女性は?」
「僕の妻になるひとです」
頼久はとても自然につかさの腰に手を回した。
驚いて思わずビクッと身を震わせる。
「なんと! そうでしたか。おめでとうございます」
オーナーは先ほどよりも直角にお辞儀する。
「彼女にピッタリの指輪を選んでいただきたいのです」
「お任せください。さあさあ、どうぞこちらへ」
そう言って案内されたのは、奥にある部屋だった。
クリーム色の壁紙に囲まれた広い部屋で、真紅のソファに大理石のテーブルがある。
どう見てもVIPルームに違いなかった。