悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。
ソファを勧められて腰を沈めると、その肌触りだけでこのソファの高級感が伝わる。
思わずいくらするのだろうと脳内で計算してしまった。
部屋にはアンティークの調度品やら観葉植物が飾られ、セレブな空間を演出している。
「奥様、とお呼びするのはまだ早いでしょうか。お名前を伺ってもよろしいですか?」
「あっ……美澄つかさと申しますっ」
慌てて頭を下げると、オーナーはにこやかに微笑む。
「美澄つかさ様。お名前までお美しいのですね」
「いえ、そんなことは……」
これはオーナーの接客サービスだとわかっていても、そんな風に褒められるとドギマギしてしまう。
それからオーナーはいくつか指輪を持ってきてくれた。
指輪一組ずつに対し、丁寧に説明してくれたがまるで頭に入らなかった。
(これ、一体いくらするの?)
値段ばかりが気になってしまい、ほとんど話を聞いていなかった。
「お気に召したものはございましたでしょうか?」
「えっと……、頼久さんはどれがいいと思う?」
「なんでもいい。つかさの好きなものを選んだらどうだ」
わからないから尋ねたのに、丸投げされてしまった。
オーナーは「お優しい旦那様ですね」などとニコニコ笑っている。
(ちっとも優しくない! なんでもいいなんて一番困るのに)