悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。
改めて指輪を見てみたが、どれも高そうだということしかわからない。
悩んだ挙句、一番シンプルなデザインのものを選んだ。
「これがいいです」
「これはまたお目が高い。こちらは生産数の少ない希少価値の高いものなのです。お得意様にしかご紹介していないものなのですよ」
「そ、そうなんですか?」
一番シンプルだから値段も比較的安いのではないかと思ったが、どうもそうではないらしい。
「内側にお名前を彫ることもできますが、いかがいたしましょう」
「え、えっと」
流石にそこまではしなくていいのではないかと思ったが、頼久が予想外のことを言った。
「名前は長いな。お互いのイニシャルはどうだ」
「イニシャルも素敵でございますね。それではY・Tと彫らせていただきます」
「よろしくお願いします」
「えっ、ちょっ、イニシャル入れるんですか?」
予想外の展開に驚き、思わず敬語になってしまった。
「どうせサイズを調整するんだ。ついでに入れてもらえばいいんじゃないか」
「そ、そういうもの……?」
「オーナー、支払いはこのカードでお願いします」
「かしこまりました」
当たり前のようにブラックカードが出てきた。
この小一時間程でつかさは圧倒されっぱなしだった。
店を出る頃には、何故かドッと疲れていた。
(もしかしなくても私、すごい人と結婚することになっちゃった……?)