悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。
その夢を叶える一歩を踏み出せたのだろう。
「つーかさ、姉ちゃんは結婚しないわけ?」
「急に何よ」
「だってもう三十だろ?」
「うるさい、ほっといて」
つかさは今年の一月で三十になった。
早生まれなので学年は三十一になる年だ。
同級生は結婚ラッシュであり、中には子どもが産まれた子もいる。
「梨の世話ばっかしてないでいい人見つけろよ」
「私は好きで梨作りをしてるんだから」
「でも、姉ちゃんが結婚して家を出て行くことになったら、ちょっと寂しいな」
「芯ちゃん……!」
つかさは思わず末の弟をぎゅうぎゅうと抱きしめる。
「芯ちゃんを置いて行ったりしないから!」
「姉ちゃん、苦しいよ」
「まだ弟離れできないんじゃ当分無理か」
「あんたは別に好きにしていいから」
「ひでー。俺もかわいい弟なのに」
要はブーブーと口を尖らせるが、七歳離れた弟と二歳差の弟では甘やかし方が変わるというものだ。
それでも内心では要を心から応援していた。
自分の目標に向かって仕事を頑張る弟を、誇りに思っている。