悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。
そう言われた時、つかさはデジャヴを感じた。
以前にも似たような会話をした気がする。
(確か私が新しくできたカフェに行きたいって言った時だっけ。まだオープン前なのに行こうって言い出して)
ちょっぴり早とちりな一面がある、昔からの頼久が垣間見えたような気がした。
彼は変わってしまったと思った。
だがまるっきりの別人になってしまったわけでなく、つかさの知っている頼久も確かに存在しているのだ。
(結婚して一緒にいれば、もっと今の頼くんを知れるのかな)
一緒にいればわかるかもしれない。
何故検事になったのか、何故変わってしまったのか、あの黒い噂は本当なのか。
つかさ自身の目で見極めたいと思った。
「――とりあえず書類だけ取り寄せて、まずはつかさの両親に挨拶しよう」
「頼く……いえ頼久さん、お願いがあるの」
「なんだ?」
「要には結婚すること言わないで」
もし要が自分のために頼久と結婚したと知ったら、責任を感じてしまうかもしれない。
これ以上心に負担をかけたくなかった。
「それと挙式は――挙げなくてもいいかな」
「そうだな」
意外にも頼久はすんなり受け入れてくれた。
「君の状況を考えたら今結婚なんてするタイミングじゃないからな。式は身辺が落ち着いたら、ということにしておこう」
「ありがとう」