悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。


 きっとつぐみの中では昔の「頼久くん」で記憶が止まっているのだろう。
 つかさはハラハラしながら見守ってしまったが、頼久は梨を受け取り顔を綻ばせた。


「……嬉しいです。ありがとうございます」

(えっ、頼くんが笑った……?)


 再会して頼久の笑顔を見るのは、初めてだった。
 その笑顔は昔と何も変わっていない。


「大切にいただきます」
「まだまだたくさんあるから、いくらでも持って行ってくださいね」


 頼久を見送ると、すぐさまつぐみはつかさを肘で小突いた。


「まさか頼久くんと付き合ってたなんて初耳よ!」
「ごめん、何となく言い出せなくて……」
「昔からイケメンだったけど、見違える程素敵になって! きっと立派な弁護士さんになられたのね」
「お母さん、実は……」


 弁護士じゃなくて検事だよ、と訂正しようとしてやめた。

 訂正すれば何故検事になったの? と尋ねられ、その質問には答えられないからだ。
 むしろつかさも教えて欲しいくらいである。

 後日きちんと挨拶するという話だったし、その時にでも話せばいいかと思うことにした。


(それにしても頼くん、あんな風に笑うこともあるんだな……)


 もしかしたら両親の前だったからかもしれない。
 それでも彼の笑顔を見られたのは嬉しく、自然とほっこりと胸の中が温かくなった。


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