悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。


 *


 それから一週間後、二人は毎週水曜日に会うという約束を決めた。

 水曜日は要の面会の日であり、つかさが千葉から東京に来る日だ。
 常に多忙の頼久は週一で予定をつくるのもなかなかに困難だが、やらなきゃ進まないので毎週水曜日と取り決めることにした。

 この日の水曜日は裁判だった。
 頼久は担当検事として入ることになっており、つかさはせっかくなので裁判を傍聴した。
 検事としての頼久を見てみたいと思い、少し緊張しながら傍聴席に座る。


「これより、被告人・小津(おづ)彩子(さいこ)の裁判を開廷いたします。まずは検事、冒頭弁論をお願いします」
「はい」


 頼久は立ち上がり、粛々と今回の事件について述べた。


「被害者は鳴橋(なるはし)周斗(しゅうと)、二十六歳。職業はフリーター。被告人の元恋人です」


 この事件は簡単に言えば、愛情のもつれによるストーカー殺人事件だ。
 被告人と被害者は恋人同士だったが、半年前に別れている。

 しかし被害者の鳴橋周斗は別れてからも、被告人の小津彩子にしつこく復縁を迫っていた。
 所謂ストーカー行為も行っていたらしい。

 ついに小津彩子を襲いナイフを突き立てようとしたが、揉み合って逆に刺されてしまったというものだった。


「被告人に殺意はありませんでした。これは正当防衛です」


 それが弁護側の主張だった。


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