悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。

第四章 知りたいのは今のあなた



「改めまして、つかささんと結婚させていただきたいと思っております」


 頼久は両親の前で、深々と頭を下げた。
 あの裁判から二週間が過ぎ、九月も半ばに入っていた。今日はつかさの家族に挨拶する日だ。

 頼久が来た時から両親は上機嫌で、結婚という話を聞いて二人は更にテンションが高くなっていた。


「それはもう……! 娘をよろしくお願いします!」
「とっても嬉しいわ!」


 つかさはちょっと、いやかなり驚いていた。
 こんなにも喜んでくれるとは思っていなかったからだ。


(特にお父さんとか、もう少し何かないの? 娘を渡さん! まではいかなくていいけど――、ホイホイ娘をよろしくお願いしますって言われるのもなんだか複雑なんだけど)


 まあきっと相手が頼久だからだろう。
 頼久は両親の前では完璧に猫かぶっている。

 裁判で冷酷に被告人を責める悪辣検事だという片鱗は、一ミリも見せない。


「つかさはね、親の欲目を抜きにしてもいい子だと思っているのですが、昔からちっとも男っ気がなくてね」
「ちょっとお父さん!」
「年頃の娘が梨作りばかりに夢中でしたから」


 色気がなくて悪かったな、とつかさはむくれる。


「本当に家族思いの自慢の娘なんです。要のこともあんなに親身になって……。だけど、自分を後回しにしてしまいがちだから、ずっと心配していました」


 立樹の瞳には涙が浮かんでいた。


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