悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。
つぐみがそういうと一瞬気まずい空気が流れた。
つかさはサッと目を逸らす。
「……申し訳ありませんが、僕は弁護士ではなく検事なのです」
「えっ、そうなのですか!?」
つぐみは驚いて頼久とつかさを交互に見やる。
つかさは顔を向けられない。隣から「何故言わなかったんだ」という圧のある視線が突き刺さっているからだ。
「あらやだてっきり……お父様が優秀な弁護士さんだったので」
「父も兄も弁護士ですが、僕は別の道に進みました」
「検事って、大丈夫なんですか」
そう言ったのは、今までずっと押し黙っていた芯だった。
「検事って無実の人を無理矢理有罪にする卑怯なやつですよね」
「芯! なんてこと言うの!?」
つぐみはすぐに頼久に向かって「すみません」と頭を下げた。
だが芯は謝らない。
「だって、そうじゃないか。あの品の悪い検事のせいで、兄ちゃんは有罪になったんだ。何も悪いことしてないのに、殺人鬼なんて言われて……っ」
「芯」
つかさは芯に向かってピシャリと言った。
末の弟をちゃん付けで呼ばないのは久しぶりだった。
「要を担当した検事さんと頼久さんは関係ない。検事だからって色眼鏡で見るのは失礼よ」
「でも……っ」
「頼久さんに謝りなさい」
芯は納得いかないように唇を噛み締めていたが、姉に咎められて頭を下げた。
「……すみませんでした」