悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。
つかさも頼久に向かって頭を下げる。
「ごめんなさい。弟が失礼しました」
「いや、いい。芯くんだったな。大人になったものだ」
東京に住んでいた時、芯はまだ小学生だった。
「君がそう思うのも無理はない。だからこそ、僕は今の状況を良しとしていない」
頼久はメガネの奥の瞳をギラリと光らせる。
「必ず真犯人を見つけ出し、法の元に正しい裁きを受けさせる」
キッパリとそう言い切る頼久に、芯は何も言えなくなってしまったのか口を真一文字に結んで俯いていた。
両親は感動したらしく、涙を浮かべて「よろしくお願いします」と何度も頭を下げていた。
つかさはというと、どちらかと言えば芯の気持ちと近いものを抱いていた。
(芯の前ではあんな風に言ってしまったけど、本当は私も迷ってる)
頼久は自分の仕事を全うしている。そのことは理解している。
信じたいとは思うのにどこか信じ切れていないのは、今の頼久を何も知らないからだ。
「姉ちゃん、本当に大丈夫なの?」
頼久を見送ってから、芯はつかさの目をじっと見つめた。
「昔一緒に遊んだっていうけど、僕はあまり覚えてないんだ」
「芯ちゃんはまだ小さかった頃だもんね」
「だから、あの人のこと信用していいのかわからない。本当に姉ちゃんのこと、幸せにしてくれるの?」
「心配してくれてありがとう」
つかさは芯に向かって優しく微笑む。
「私なら大丈夫だから」