悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。


 あんなものとっくに捨てられていると思っていたのに、まだ飾ってくれていたなんて。


「あの、」
「失礼」


 頼久の電話が鳴った。一言、二言会話をする。
 電話に出た瞬間から、頼久の顔つきは冷酷な検事に変わっていた。


「すまない、仕事だ」
「あ、はい。行ってらっしゃい」
「向かって右奥の部屋がつかさの部屋だ。送った荷物が置いてあるから好きにしてくれ」
「わかった」
「夕飯は食べない」


 要件だけ伝えると頼久は出て行ってしまった。
 一人だけ残されると、この部屋の広さを余計に感じる。


「……荷解きをしよう」


 言われた部屋に行くとベッドが一台用意されていた。
 それ以外にはつかさが実家から送った段ボールが積まれているだけだ。

 頼久が言うには、たまに家族が泊まりに来る時に使っていた寝るためだけの部屋らしい。
 だからベッドが一台だけあるそうだ。

 かなり綺麗にしてあるので普段から掃除は行き届いていそうだが、ベッドしかないところが何とも頼久らしい。


「それにしても、家具が何もないのは不便すぎるよね」


 荷解きをする前にある程度家具を揃える必要があると思ったつかさは、ホームセンターに行くことにした。
 とりあえず棚を買うだけでも収まりが良くなると思ったのだ。


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