悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。


 *


 つかさは良さげな棚をいくつか買って帰った。
 郵送もできたがすぐに欲しかったので、自分で持ち帰ることにした。

 農業なんてしていると重いものを持つのに抵抗がない。
 これくらいなら、と平気で抱えられる。


「おっと」
「わっ、すみません」


 平気で抱えられると言っても三つは多すぎたか、よろけて人にぶつかりそうになってしまった。


「失礼いたしました。怪我はありませんか?」
「いえ、当たったわけではないので……あれ、もしかしてつかさちゃん?」
「えっ」


 改めてぶつかりそうになった男性の顔を見ると、頼久によく似た端整な容姿をしていた。


「ハルくん!?」
「やっぱり! 久しぶりだな!」
「久しぶりだね!」


 頼久の一つ上の兄・惺久(はるひさ)だった。
 惺久は嬉しそうに目を細める。


「今ちょうど頼久の家に向かうところだったんだ」
「あ、そうだったの? でも頼久さん、今仕事でいなくて」
「なんだ、結婚祝いを持って行くって言ってあったのに」


 惺久は細長い形のショッパーを持っていた。
 恐らく中身はワインだろうか。


「改めて結婚おめでとう。つかさちゃんが義妹(いもうと)になるなんて嬉しいよ」
「ありがとう」
「それにしても、それ一人で持つつもりだったのか?」
「あ、うん」


 急に一人で棚を三つも抱えていることが恥ずかしくなってしまう。


「持とう」


< 60 / 157 >

この作品をシェア

pagetop