悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。
惺久は軽々とつかさの抱えていた棚を持ってくれた。
「大丈夫だよ! こんなに重いもの、申し訳ないし」
「ならこれを持ってくれるか? 結婚祝いのワインだから」
「あ、ありがとう」
あまりにもスマートに渡され、そのまま受け取るしかなかった。
「本当にいいの?」
「これくらいなんてことない」
「ありがとう」
爽やかに返されて、思わず溜息が漏れ出そうになってしまう。
惺久に会うのはもっと久しぶりだが、王子様のような爽やかさとスマートさは健在のようだ。
そのまま自宅まで運んでくれた。
「それにしても、まさか弟に先を越されるとはね」
「ハルくん、独身なの?」
「まあな」
「ハルくんならとっくに結婚してると思ってた」
「生憎今は恋愛より仕事なんだ。頼久もそうだと思っていたのに、相手がつかさちゃんと知ったら納得したよ」
惺久は楽しそうにニヤリと笑う。
「あはは、どうかな……」
つかさは曖昧な笑みを浮かべて誤魔化した。
「新居は買わないのか?」
「うん、ひとまずは頼久さんのお家で一緒に住むことにしたの」
「頼久のこと、さん付けなんだ?」
「あっ、これは……何だか昔みたいに呼ぶのは恥ずかしくて」
内心では今も「頼くん」と呼んでしまうが、面と向かっては何となく呼びづらく人前でも恥ずかしくなってしまう。
「そっか、まあ子どもの頃とは違うもんな」