悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。


 頼久はメガネを押し上げる。
 真犯人は要に罪を着せ、逃げおおせると思っているのかもしれないが、そうはいかない。


「あとは横領の方か」
「こっちは上手いこと作られてるんですよねー」


 決して多額の横領ではなく、あくまで経費の一部を着服していたため、一度の横領金額はそこまで多くはない。
 せいぜい数千円といったところ。

 だが数千円も積み重なれば何十万と膨らんでいく。


「備品の一部を、って感じだから経費申請上手く通してたみたいです。ズボラな人だと確認もしなかったみたいだし」
「杜撰だな」
「にしても、ケチくさくないっすか? 経費の一部ちょろまかすって」
「多少は気づかれないと思っているから何度もやるのだろう」


 一度やってバレないと思ったら、脳のリミッターが外れて何度でも繰り返すことが多い。
 その結果がこの現状ということだ。


(不可解なのは、この事件が明るみになってから要くんの横領が発覚したことだ)


 経理部では以前から若干の数字が合わない件が問題になっていた。
 だが最初は微々たる数字だったため、多少の誤差という理由で不問になった。

 経費の申請締日や月またぎによっては多少の誤差が発生するため、それが要因だろうと報告していなかったらしい。

 しかし徐々に数字の誤差が大きくなっていた。
 流石におかしいと経理部全体で調査を行ったが、明確な原因を追及できなかった。

 ところが社長が殺害された後、美澄要の名で申請された経費に違和感があることがわかり、捜査を進めた結果一部経費の横領が発覚した。


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