悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。
頼久は思案した。
一度は経理部全体で調査を行っているにも関わらず、今になって犯人が要だったとわかるのはあまりにもおかしい。
(経理部の中に申請を書き換えた者がいるのかもしれないな)
「藤川、経理部の人間についてだが」
「リストアップしてありますよ」
藤川が差し出したファイルには、でかでかと「経理部マル秘」と書かれてあり、中を見ると経理部数名の写真とプロフィールが記載されていた。
社歴、前職の経歴はもちろんのこと、好きな食べ物やよく飲みに行く場所まで事細かに記載されている。
「なんでこんなことまで書かれてるんだ」
「いやー、清掃のおばちゃんがなかなかに情報通で色々教えてくれたんすよねー」
もはや探偵に転職した方が良いのではと思うレベルで、藤川のコミュニケーション能力と情報収集力は頼久も一目置いている。
頼久はファイルを眺めている中で、ある人物の名前に目が止まった。
その人物の名前と顔写真を見て、大きく目を見開く。
「この人は……」
「あ、その人はちょろっとだけ話しましたよ。美人だけど、香水の匂いがキツかったなぁ。なーんか話聞き出せないかなって思ったけど、鼻が曲がりそうで。匂いの相性ってかなり大事だと思いません?」
関係ないことをベラベラと喋る藤川を遮った。
「この女性、内海まりえは僕の大学時代の同期だ」
「ええっ!?」