悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。


 内海まりえは頼久の法学部時代の同期であり、彼女の祖父が元農林大臣で大学以前の知り合いでもあった。
 頼久の祖父は元法務大臣であり、家族揃ってホームパーティーに招かれたこともある。

 率直に言ってまりえは苦手だった。
 頼久に対し好意があるのは何となくわかっていたが、交際していないにも関わらず人前で頼久の恋人のように振る舞う。

 否定したいが、まりえは場を選んで外堀を埋めようとしていた。
 流石の頼久も祖父がお世話になっている人の前で「彼女とは何でもありません」と言い切れない。

 何故ならまりえの祖父は孫娘を目に入れても痛くない程可愛がっており、いつも鼻高々に自慢していたからだ。
 愛孫娘の尊厳を傷つけるなど許すはずがない。

 だがその結果、まりえの祖父が「いっそ結婚したらどうだ」などと言うので、流石の頼久も黙っていられなくなる。


『僕にはずっと好きな人がいる。彼女以外は考えられない』
『それって誰よ?』
『内海には関係ないだろう』
『いいえ、あるわ。私との婚約を破棄するつもりなの?』
『君と婚約なんかした覚えはない』


 冷たく突き放すと、まりえは顔を真っ赤にして睨みつけていた。
 頼久はそのまま無視して立ち去る。

 それとなく頼久の祖父が気を回してくれたこともあり、その後まりえからのアプローチはなくなった。
 司法試験を控えたあたりから彼女との繋がりは完全に途絶える。


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