悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。


 しかしまさかこんな形で再び彼女と繋がるとは思ってもみなかった。


「藤川、内海まりえを徹底的に調べてくれないか」
「わかりました」


 藤川はニヤリと笑う。


「その顔は何かピンときたんですね」
「まだわからん。だが何となく気になる」
「永瀬さんの何となくは何となくじゃないんだよなー。ま、楽しみにしててくださいよ」
「ああ」


 頼久はブラックコーヒーを淹れる。
 イギリスから取り寄せたコーヒー豆を挽いて飲むのが頼久のお気に入りだった。

 この絶妙な苦味が体をほぐし、脳に刺激を与えてくれる。


「永瀬さんってなんで何も言わないんですか?」
「何の話だ」
「黒い噂が立ってること、知らないわけじゃないですよね?」


 藤川は勝手に頼久のコーヒーメーカーからコーヒーを注ぎ、ドバドバと砂糖とミルクを入れる。


「言いたいやつに言わせておけばいい」
「否定くらいすりゃいいのに。悪辣検事なんて言われてるんですよ?」
「その悪辣検事の担当に名乗り出たお前は相当変わり者だな」
「だって出世コースじゃないですか。永瀬さんが出世すれば、俺も上がる」


 清々しい程に素直だと思った。
 だが藤川のこういうところは嫌いではない、むしろ好ましい。


「あのバカ息子検事の補佐よりずっと楽しいですしね」


 その言葉を聞き、頼久は少し目を見開く。


「関屋検事の担当をしてたのか?」
「あれ、言いませんでしたっけ」


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