悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。


 藤川は砂糖をたっぷり入れたカフェオレを飲む。


「元々関屋の担当事務官してたけど、絶望的に相性悪くて担当外されました」


 そういえば一時期関屋は事務官が無能すぎる、と毎日のように愚痴をこぼしていた。
 あれは藤川のことだったらしい。


「自分じゃ何もできないくせに偉そうで嫌なやつですよ」
「だろうな」
「だから永瀬さんの担当に志願したんです。関屋のやつ、やたらと永瀬さんを目の仇にしてるからどんな人なんだろうと思って」
「……なるほどな」
「こっちに来て正解でした」


 藤川はフフッと楽しそうに笑う。

 関屋成史は頼久が東京地検の配属になってからというもの、ずっと目の仇にしている。
 その理由は単純明快、頼久への嫉妬だ。

 関屋より年下でありながら、若手ナンバーワンと謳われる頼久の優秀さを妬んでいる。
 父親の関屋検事正に目をかけられている点も気に入らないのだろう。

 更に藤川曰く頼久の容姿端麗さにも文句を言っているという。
 容姿など検事の能力には無関係だが、関屋には許せない点らしい。

 つまらない男だと頼久は思う。
 自分は父親に敷かれたレールの上を嬉々として歩み、我が物顔で今の地位に甘んじているくせに。

 相手にするだけ時間の無駄なのでいつも適当に流している。
 裏であの男が何をしていようが自分には関係ない。

 そう思っていたが、あのことだけは許せなかった。


< 71 / 157 >

この作品をシェア

pagetop