悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。
地検から出た時、つかさが関屋に訴えかけている姿を見てメガネの度が合っていないのかと思った。
だが近づけば近づく程につかさ本人だと確信する。
テシマホールディングス社長殺害の事件が報じられ、容疑者が美澄要と知った時はまさかと思った。
だがちょうどその頃別の事件で手一杯であり、公判の結果も知らなかった。
『だって、弟はやってない!』
つかさは真っ直ぐな瞳で関屋を睨み付け、必死に訴えている。
その姿は昔と変わらない、正義感が強くて真面目で家族思いのつかさのままだ。
『弟さんのためにどこまでカラダを張れますか? ――お姉さん』
関屋が下品な顔でそう言った時は、頭に血が昇って関屋を殴り飛ばしたい衝動に駆られた。
関屋の女癖の悪さは有名だ。
数々の浮き名を流し、中には週刊誌に不倫現場を撮られて関屋検事正によって握り潰されている。
それでもこの男は懲りないのだから、もはや病気だろうと思っていた。
だがその魔の手がつかさにまで及ぶのは絶対に許せない。
気がつけば速歩きで近づき、真っ赤な顔をして関屋に向かって手を挙げようとするつかさの腕を掴んでいた。
『地検の前で堂々とナンパですか。関屋検事』
関屋を牽制し、つかさを守った。彼女には関屋の女癖の悪さを忠告した。
それだけで立ち去るつもりだったが、つかさは頼久を呼び止める。
『頼くん、だよね……?』