悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。
ある日、つかさが一人で泣いていた。
理由を尋ねたが、首を横に振る。
『なんでもない! 頼くんには関係ないよ!』
関係ないと言われたことに少しショックを受けた。つかさの腕を掴もうとしたら、振り払われる。
それでも頼久はつかさを真っ直ぐ見て言った。
『何かあったら僕に頼れっていつも言っているだろう?』
つかさは頼久の顔を見ようとせず、何故拒絶するような態度を取るのかわからなかった。
『それとも僕には話せないのか?』
『……っ』
どんなつかさも好きだと断言できるが、あまり泣いている姿は見たくない。
というよりも、見せたくない。泣くのなら自分の前だけにしてほしい、自分にだけ甘えてほしいと思う。
恋人でもないくせに、こんな状況まで独占欲を滲ませる自分が情けないと思った。
『……私のことは放っておいて』
『つかさ……』
『頼くんには関係ないし話したくない! ハルくんに相談するから!』
はっきり告げられた時、鋭利なナイフで心臓を抉られたような気持ちになる。
(……ああ、そうだよな)
自分には頼れない、頼りたくないと思っているのだ。甘えてほしいなどという願いは、利己的で浅はかなものだった。
つかさの気持ちなんてとっくの昔から知っていたはずなのに。
『……そうか、僕では頼りないか』
『あ……』
『わかった。もう話しかけない』
この瞬間、頼久ははっきりとフラれたのだと思った。